小暮香帆さんワークショップ

2017年8月12・13日、M・L・I 夏合宿開催に合わせ招聘講師として小暮香帆さんをお招きしてのワークショップが開催されました。昨年度もM・L・I でワークショップをして下さった小暮さん。二度目となるM・L・Iでのワークショップは振付・クリエーションワークショップということでメンバーも楽しみにしていました。

 

ワークショップ一日目。

ワークショップ始まり、一番最初に言われたことは足の使い方でした。「足(足の裏)を丁寧に使えている人の動きは見ていて心惹かれるんです。」という言葉が印象に残っています。

足をどう使うのか、まずは足裏を意識しながら歩いたり走ったりして、足裏の感覚を研ぎ澄ましていきます。

足の裏のどこが床についているのか、足の裏のどこを通って動いているのか、重心を変えたりしながら注意深く観察していきます。足裏全体で地面を掴んで離して、様々な動きの中で足裏がどう使われているのかに意識を巡らせ、足の裏の感覚と動きを丁寧に感じて取っていきます。

 

足の動きに意識を通わせたところで、いよいよ振付へ。

小暮さんはその場で生み出した動きを、「お腹に前からボールがポンと入って、そのボールがお腹の周り、胸の周り、肩の周りを通って右肩へ。そうしたら今度は、右肩から右の首筋、後頭部、顔面を通って右耳へ。そこからもう一度後頭部を通り頭の周りをぐるっと通ったらボールは頭頂部へ。頭頂部から、体の中心を通るように、おでこ、鼻筋、喉、胸、お腹、お臍、へとボールが通り、最後左足の裏へ滑り落ちていく。」というように、イメージで私達に伝えてくれました。


 

ここでは、動きを真似するのではなく、イメージで体を動かしていくことが求めてられていきます。小暮さんの誘導により、ボールが通っていく動線を変えたり、それに合わせて体を大きく動かすことで、同じイメージを持ちながら、個々の体からはそれぞれの持ち味が出た動きが生まれていきます。

小暮さんはその様子を見ながら、次の振りを作っていきます。動きながら「こうじゃないな。。。こっちかな。」と、自分の感覚に合う動きを選び取りながら振りを作っていく姿がとても印象的でした。

イメージの振りの次に小暮さんから渡された振りは、体の方向性、使い方が細かく決まった動きでした。体の向き、体の部位がどういう軌道を描いて動いているかなど、一つ一つの動きが丁寧に伝えられていきます。伝えられる動きを覚えながら、同時に小暮さんが動く時の質感やスピード、間といったものもできるだけ多く取っていこうとするメンバー。動きの具体性と、さらにそこにイメージものせていく作業に必死になりながらも、渡された振りを何度も繰り返し体に馴染ませていきます。

 

ここまでで一度、頭から全員で通して踊り、細かな修正が加えられていきます。何度目かの通しの後、小暮さんから「振りが終わった人から、最初に足裏を意識しながら歩いたような感じで、好きなように歩いてください。」という指示が。全員が歩くところまでいったところで、一日目のワークショップは終了。2時間という短い時間の中で、ピースとなるシーンが生み出されました。

 

ワークショップ二日目は、昨日からの続きを作っていくことになりました。

昨日までの振りの確認をした後、通して動き、最後に止まった偶然の位置関係から、次のシーンを生み出していく小暮さん。

ここから、バラバラの方向を向いたメンバーへ個々の振付が始まりました。点在するメンバーの体それぞれに振りを付けていきながらも、空間全体の関係性への意識は絶やされることはなく、個の動きを生み出しながら、一つの世界が作り出されていきます。それはまるで、一つの大きな流れの中にあったものが、分岐し、独自の流れを生み出しながら、また同じ大きな流れに戻っていくように感じられました。


周りで起こっていること、そこで自分が求められていることを、考え、感じながら自分に与えられた振りを踊っていく中で、同じ空間で起きている様々な出来事が一つの方向へ向かってるような感覚があり、向かっている先までは何かはわからないけれど、ここまで踊ってきた先には、向かう何かがあるということが感じられました。一つの振りから始まった動きは、気がつけば15分程の小作品という形となりました。

作家として振りを作り、そして作品へと繋げていく、その過程を間近で見て感じることができたこと。そしてそこで生まれた振りを踊り、作家が求められていることにどう応えるのか、作品の中で自分が何を求めれられているのか、ダンサーとして向き合えたこと。ソロ公演を終え、作家として作品を作り、ダンサーとしてその作品を踊ったばかりの私達に、今このタイミングでその両方を体感することができた今回のワークショップは、得るものがとても多い時間となりました。

 

踊りを生みだし、伝え、それを踊ることは、自分の周りにある全てのことから生まれてくるのだと感じました。作家として、周りを取り囲んでいるものから「これだ」と思うものをキャッチし自分の体で具現化していく力と、ダンサーとしてそれを再現化する力、この双方がもっと必要になると強く感じました。

今回のワークで得たことを、次に繋げていきたいと思います。

小暮香帆さん、ありがとうございました。

 

 

 

 

(田中麻美)