笠井瑞丈さんによるワークショップ

2016年8月19・20日は笠井瑞丈さんによるワークショップが開催されました。

昨年度に引き続き、M・L・Iでのワークショップは今回が2度目。昨年受講したメンバーはその世界観に再び触れることができる事を、初めてのメンバーはどんな体験が待っているのかと楽しみにしていました。

 

ワークショップ一日目。今回は発声プリエで体をほぐすところから。

バレエの2番ポジションを基礎に、声を出しながらプリエをします。最初「イー」と発声しながらプリエ。次に「オー」と発声しながら両足をプリエから元の状態に。最後「アー」と発声しながら両手を開いて2番ポジションに。「イー」の時に背骨を感じて、「オー」では空気を両手で抱えすくい上げるように。「アー」は後頭部側を意識。これを何度か繰り返します。何度か繰り返したら、今度は声には出さずにプリエを。この時、呼吸と空気の流れ・喉の状態は発声している時と同じ感覚で行います。喉の筋肉を使うことは、踊る上でもとても大切と教えていただきました。

プリエで体をほぐした後は間髪入れずに、今回のメインワークとなる振付と即興を踊るに続きます。

まずは振付から。振りを渡され、その振りを覚えて踊る。ただその振りを動くのではなく、空間の中に彫刻があってそれを一気に掘り出すイメージとともに、全身のエネルギーを高めて動きに込めていきます。意志の強さ。こうであるべきという強さとともに振りをつないでいきます。始めはただ「振りを動く」になっていたメンバーも、瑞丈さんからの「怒ってみて!怒りっていうのはものすごいエネルギーだから!」という言葉に全身のエネルギーを使って応えていきます。なりふり構わず、振りに向かっていく姿が皆とても印象的でした。普段見ることのできないメンバーの一面が見えてきて、面白かった。かたちをとるのではなく、動くことで見えてくるかたち。その空間にある見えない彫刻を、動くことで一気に掘り出していくイメージで動きをつないでいきます。

 

即興では、体の感覚をどう捉えて動くかということを様々なアプローチを試していきました。まず、呼吸と手の動きを組み合わせての歩きで体の感覚を探ります。息を吸いながら、両手を上げていき前に歩き、息を吸いきったら今度は吐きながら、両手も下げていき後ろに歩く。この時、両手の上下を呼吸をコントロールして合わせることが大切。上下と合わせて真ん中もあり、この時は体の感覚も息を吸って浮かんでいく感じと沈んでいく感じの中間を意識します。即興ではこの感覚を使って動いてみたり、その他、記憶や血液の記憶など色々なものを手掛かりに動いていきました。

振付と即興は何が違うのか。実際に動いてみてどうだったか。今回のワークショップでは実際に感じて思ったことを話し合う時間が何度もありました。体を動かすこと、踊ることに対しての個々の身体感覚の違いなどを互いに共有することで、自分にはない新たな発見や気づきが多くありました。何かが変わる瞬間の意志が強くなければ伝わらない。変わり目への意志と力が必要なのだと思いました。

 

ワーク二日目も初日に引き続き、振りと即興を織り交ぜながら進んでいきました。

追加されていく振りをどんどん体に入れていき、何度も何度も踊ります。自分でも踊り、メンバーが踊っているのも見て、かたちではない共通の感覚があるように感じました。それは同じ温度のエネルギーであったり、そこに行くという意志であったり。かたちではなく、そういう感覚をどんどん研ぎ澄ましていくことで、動きが明確となり、その動きから伝わるものがより伝わってくるような気がしました。一人ずつ振りを踊るシーンでは、瑞丈さんの言葉を受け各々がこれまでの自分になかったところに向かい、無心に動き続きける姿があり、今まで知らなかった新鮮で新たな一面も見ることができました。

ワーク最後は「寝ているところから立つ」をしました。床に好きなように寝て、そこから植物のように足が天井に伸び、その後、肩を抜きながら後方に転がり、四つ這いに。そこからゆっくり立って二足立ち。さらに天井に伸び続けていくイメージで歩く。鉱物から植物に、植物から動物に、動物から人間に。さらにどんどん伸び続けていく。小さな種から芽が出て成長し、何百年もかけて大木への姿を変える。自分の体を数センチ動かすことがその木の数年・数十年の時であること。その時を丁寧に感じながら、変化の瞬間を大切に床から立ち上がっていきます。体の変化はもちろん、視界の変化(世界を見る目と目線の違いなど)を感じ、変化の時を意志を持って動く。この二日間のワークで伝えていただいたことが集約されているように感じました。

強い意志を持って、自分の範囲から飛び出して動く事。突き抜けて動く事への挑戦をさせていただいた二日間となりました。瑞丈さん、二日間のワークショップありがとうございました。

 

笠井瑞丈プロフィール

1975年東京生まれ、幼少時代をドイツで過ごす。笠井叡に舞踏を、山崎広太にダンスを師事。

様々なスタイルのダンスをエッセンスに取り入れながら独自の世界観をもつ作品を国内外で発表し、自作のソロダンスだけではなく、デュオやグループ作品の振付や他の振付家の作品への出演も積極的に行っている。

2009年文化庁新進芸術家海外留学研修員として、ニューヨークで研修。2010年横浜Solo×DuoCompetition>プラス・審査員特別賞受賞。

2016年テロ・サーリネン カンパニーの作品に参加。

振りを踊ること。即興で踊ること。ワークショップ中、何度も感じたことを共有しました。

二日間のワークショップ終了後はsolos...Vol.3 笠井瑞丈 ソロダンス公演 「月に吠える」へ。公演の模様はWorks-M公式サイトhttp://worksmlabo.wixsite.com/works-m/solos-vol-3-2からご覧いただけます。